飛べないブタはただのブタさん

もはやブタはいません。

高学歴ワーキングプア

読了

高学歴ワーキングプア  「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)

高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)


博士(特に人文・社会科学系)が就職できずにフリーターもしくは非正規雇用の講師としてワーキングプアに陥ってしまうのはなぜか、どうすればよいのか、というお話でした。著者も博士修了後も確実なポストについておらず、4月1日(まさに今日か)からの身の振り方は決まっていないらしい。
著者は平成3年の文科省による大学院重点化の政策において、大学院の学生を増やすことにしか目を向けられていなかった結果、博士課程修了者の就職などのサポートを怠り、今日のような無職率の増大を生んでしまった、ということを一番問題としてるみたいでした。確かに下記のサイトにある「数字で見る博士課程修了後」では、人文科学系・社会科学系の博士課程修了者の就職者数を見ると、学生数の増加に対して全く横ばいの状況となっているのが分かる。
ただ個人的には、工学系ではまた博士課程の問題は別のところにあるということもあって*1、例えば卒業式の学位記授与式での先生の祝辞なんかでは「博士課程にぜひチャレンジしてください」「博士を出れば、社会に出ても何でもつぶしが利きます」とおっしゃってたように、著者の目線と自分の目線がずれていて、著者の意見に納得するところまでは行きませんでした。実際に博士を出て「被害」に合っている人たちの話を読むと、文科省や大学の経営陣の無策さが身にしみて分かる。しかしこれを読んでいても将来自分が博士課程に進むかどうか、ということの指針にはちょっとならなかったのが残念でした。一応自分のキャリアを考える上で読んだのですが、そういう観点からではあまり参考にはなりませんでした。勿論書かれていることは非常に重大な欠陥を指摘しておりとても考えさせられました。後の方の章では著者も「自分の専門を投げることも重要」「固執することはない」と同じ境遇の人に訴えかけています。実際に博士課程修了後に専門分野を飛び出して、新たな分野で活躍している人もいることを紹介していました。ただこのご時世で、遍く分野において博士課程を進んでいる人が、著者が思っているほど大学の正規雇用(専任講師)にこだわりがあるかどうか、というのは微妙。
あと著書において随所で恨み節が目立っていたのが気になりました。著者が自分で経験していることだからこそ改善を訴えるというのはわかりますが、所々に精神論が目立っていて、飛躍的な論理もいくつか見受けられていて少し理解に苦しむところもありました。でもそれほど実情はひどいんでしょうね。

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そういえばこういうのもあったな。

博士が100人いるむら

*1:そもそも修士課程の学生が多すぎて、面倒を見る博士課程の学生が極端に不足している状況。これもH3の大学院重点化が問題にある