飛べないブタはただのブタさん

もはやブタはいません。

夏姫

夏姫春秋(上) (講談社文庫)

夏姫春秋(上) (講談社文庫)


読んだ。夏姫は中国では淫乱な悪女ということの評判の方があるらしく、色欲のために夏姫を愛撫した王や重臣たちはみんな死んでしまうという不幸な運命を乗り越えようとしても報われない感があり、結構かわいそうな話です。で、最後に娶った巫臣ていう楚の宰臣は、夏姫の悲運を克服するために亡命して、ともに幸せに暮らしたというイケメンっぷりが全部持ってった感があります。
 
やっぱり読んでていいなぁと思ったのは、夏姫を取り巻く男たちの描写が主眼であり、夏姫にあまり焦点がないということが、逆に夏姫に対して一定の距離を保ちながら客観的にその世界を楽しめたということがありました。悪く言えば淡々としているということですが、逆にこれは夏姫が悪女という歴史的な風説に対する批判であるようにも感じました。オープニングからいきなり近親相姦っていう割とインパクトの強い演出があるので、それに比べると後は少し物足りない感はありますが、夏姫ばかりクローズアップするだけでなく、春秋の複雑な国家バランスであるとか、その時代の背景を丹念に書き込んで一つの世界を創り上げているので、ただ夏姫の物語というだけでなく、夏姫が生きた世界を表現していたと思います。楽しかったです。
 
ちなみに夏姫といろんな男たちがまぐわうシーンがものすごい生々しくて官能小説みたいでした。R15くらいはあるだろう。膝頭が開いたっておいおい、電車の中で落ち着きませんでした。
 
次はどうしよう。