飛べないブタはただのブタさん

もはやブタはいません。

Bottom Billion

最底辺の10億人 最も貧しい国々のために本当になすべきことは何か?

最底辺の10億人 最も貧しい国々のために本当になすべきことは何か?


読了。どうしてアフリカなどの貧困国で、国連や先進諸国の援助や軍事介入が上手くいかないか、貧困から抜け出せない「罠」とは何か、貧困を解決するために我々はどうすればよいのか、ということを体系的に一つにまとめられた本でした。著者のポールコリアー氏はアフリカ経済の権威であり、長年彼が調べた莫大かつ玉石混合のデータを精査し分析を行ってきたものの集大成的なものとして書いたようです。面白い。
 
関心があったのは、金銭援助ではなく技術開発を重点に置いた援助を行うこと、次に狙い目は紛争後の政情不安定な時期で、そこで効果的に軍事介入を行い秩序を保つことでクーデターを起こさないようにすること(クーデターは革命の象徴で好まれると思われがちだが、さらなる紛争を起こす確率が非常に高い)、それと、石油やダイヤモンドのような天然資源による一次的産出品に利益を頼っている国ほど、貧困状況を脱しにくいということだった。天然資源が豊富であればあるほどそれによる利益に頼りがちであり、加工品などの産業を興しにくい状況に陥りやすく、さらなる発展が目指せないものであるらしい。
 
などなど、貧困を脱することが出来ないことについては紛争や天然資源といった「4つの罠」に大きく分けられ、また軍事介入の必要性(軍事介入は出来る限り必要であるらしい)や、国際憲章の重要な役割など、様々なことが書いてあり、非常に面白かったです。実際に得られたデータを定量的に分析していることで、合理的な援助・軍事介入を提言していました。アフリカを援助するNGOについても、理念が先行していて合理的ではない援助はやっても意味がないとバッサリ批判してました。やっぱり理念云々よりも定量的分析結果から必要なことは何か、ということは大事ですね。この前読んだ「少子化で何が悪いか!」(赤川学著)と同じような読後感がありました。「募金しようぜ!」と言って募金しても、そのお金が貧困国の困ったちゃん大統領の懐に入る→スイス銀行に預けられる、じゃ意味ないですからね。

あとは官僚主導の援助では、アフリカの援助はリスクが大きすぎてなかなか実行されにくい*1面が大きいということで、いわゆるベンチャーキャピタルみたいなもので開発援助を行うことが有効なのではないか、ということに非常に関心を持った。ベンチャーで一発起業して儲かるのと同じ感じで、ということらしい。なるほど。
 
ただ訳がなんか微妙な感じでした。。。誤訳も多くて読むのがしんどかったです。

*1:援助から得られた便益性が、官僚の直接評価につながる、というのが大きな原因らしい