飛べないブタはただのブタさん

もはやブタはいません。

大型店

読了


いわゆる「ビッグボックス」と呼ばれる郊外の大型店の濫立について、アメリカでは州や地域自治体において市民団体や議会から規制を呼びかける動きが活発なのに対し、日本では2000年に廃止された「大店法」の代わりに制定された「大規模小売店舗立地法」によって大型資本の郊外への進出が容易になってしまい、地方の主要都市の商業地域がどんどん閉塞してしまってシャッター街化してしまう現状になってしまってることに警鐘を鳴らしている一冊。しかも大型店舗の進出を阻害している大店法の廃止に圧力をかけていたのが、アメリカを中心とした海外資本というなんともいろいろ矛盾した日本の今の制度はやばいですね、ということでした。

アメリカは意外と州や自治体レベルでウォルマートとかコストコのような大型店の進出が地域にとってマイナスであるということをしっかり調査し、議会がきちんと了承し地域経済をコントロールしているようです。いいね。一方日本では国の方針として「コンパクトシティを目指したまちづくり」を示しているはずなのに、郊外への大型店の設置を認めやすくなっている現状をなんとかしないと、ということですね。実際地域経済の核として地方自治体が某イオンやらヨーカドーやらを誘致して、地域の活性化を目指すというのはよくある話だと思いますが、問題点としては?地域経済は基本的にゼロサムゲームであり、大型店の進出により市街地の小規模小売店がどんどんつぶれてしまう、結果的に中核部が衰退してしまい、活力を失う。?クルマ社会を前提とした店舗設置により、高齢者等クルマを使えない人たちがアクセスできず、また商店街が衰退することによって、容易に生鮮食品を購入するなど豊かな生活を送る保障がなくなる。?大型店周辺の交通渋滞・騒音・環境汚染が発生し、結果的に地域に環境負荷が大きくかかる。?都市間において大型店の誘致などの競争を引き起こしてしまい、結果的に都市同士の社会的コストが増大、地域住民に負担が増える。などなど問題点だらけですね。なので現在では各地域で条例によって大型店舗の設置について制限をかけようとする動きがあるようです。また大型店舗は基本的に域外資本なので、得られた利益がその地域に還元されているはずもなく、またその大型店舗によって発生する社会的コストを負担しているのはその地域の住民である、というなんとも不公平なこともあります。以前四街道市の市民センターか何かの新設について書いたときも思ったのですが、もう今のご時世において、大型店設置・新しい大きな建物が大きな魅力になると市民に感じさせるやり方はもう時代遅れのような気がします。明らかに地域住民のことを考えていないやり方であると思います。それよりも地域の商業を活性化させ、住民が住んでいて誇りと思えるようなまちづくりを目指すことが今は大事なんではないかと思います。ということをひしひしと思いました。

個人的にはこないだIKEAに行った時も思ったんですが、やっぱりその大型店自体にはとても魅力がある(むしろ魅力が感じられるような造りになっている)ので、船橋のような臨海工業地域のような辺鄙なところならつくってもよいような*1。だめかね。今度実家の近くにもIKEAができるらしいが、やっぱりそこでも地元の商店街で反対運動が起きたらしい。今回の場合は大阪市が五輪誘致で残した負の遺産を利用したかった思惑もあるんだろうが、やっぱりこういう大型店の設置には最終的には住民の意見を十二分に反映しないと、いざ閉店となるときに地元はダメージを受けまくった状態で本当にどうしようもないことになると思いますね。この本では「焼畑商業」と表現していましたが、まさに負の遺産として残ったときが恐怖ですね。

*1:実際につぶれた工場跡は地価が物凄い下がっているから設置しやすいらしい。それでもR357は大渋滞。向いにはららぽーとあるしね。。。